「キャリアって、どうやって考えればいいんだろう」
この問いに対して、研究者たちは長年にわたって答えを探してきました。ここでは実際のキャリア設計に役立つ3つの理論を、難しい言葉を使わずに解説します。
・Edgar Schein「Career Anchors」(1978)
・John D. Krumboltz「Planned Happenstance Theory」(1999)
・Michael Arthur「The Boundaryless Career」(1996)
・厚生労働省|若年者雇用対策
理論1:キャリアアンカー(エドガー・シャイン)
「キャリアアンカー」とは何か
マサチューセッツ工科大学(MIT)の組織心理学者エドガー・シャインが提唱した概念で、「どれだけ状況が変わっても、自分が譲れない価値観・欲求・才能の組み合わせ」をアンカー(船の錨)と呼びます。
シャインは、人はキャリアを通じて必ず1〜2つの支配的なアンカーを持っていると主張しました。
8つのキャリアアンカー
| アンカー | 特徴・価値観 |
|---|---|
| 専門・職能的能力 | 特定分野のエキスパートであることに満足。管理職より専門職志向 |
| 全般管理能力 | 組織を動かし人をマネジメントすることに喜び |
| 自律・独立 | 自分のペース・方法で働くことを最優先 |
| 保障・安定 | 雇用の安定・将来の予測可能性を重視 |
| 起業家的創造性 | 何か新しいものを作り上げることへの強い欲求 |
| 奉仕・社会貢献 | 社会や他者の役に立つことが最大のモチベーション |
| 純粋な挑戦 | 難問を解決すること自体が目的。競争・克服が好き |
| 生活様式 | 仕事と私生活のバランスを何より大切にする |
実践への応用:自分のキャリアアンカーを知ると、「なぜ今の仕事が合わないのか」が明確になります。例えば「自律・独立」アンカーが強い人が、細かく管理される環境に置かれると強いストレスを感じます。
理論2:プランドハプンスタンス(クランボルツ)
「計画的偶発性理論」とは
スタンフォード大学のジョン・クランボルツが1999年に提唱した理論。「成功したキャリアの約80%は予期しない偶然の出来事によって形成されている」という調査結果をもとにしています。
従来の「キャリアは計画するもの」という考え方を覆し、偶然の出来事を最大限に活かすことがキャリア設計の本質だと主張しました。
偶然を活かす5つの行動特性
- 好奇心:新しい学習機会を常に探索する
- 持続性:失敗しても諦めない
- 柔軟性:状況や態度を変化させられる
- 楽観性:新しい機会は必ず実現できると信じる
- 冒険心:結果が不確実でも行動する
実践への応用:「まず動く」ことの重要性を教えてくれます。完璧な計画を立ててから動くより、まず小さな一歩を踏み出すことで、予期しないチャンスが生まれます。転職活動で「情報収集だけ」で止まっている人への処方箋でもあります。
理論3:バウンダリーレス・キャリア(マイケル・アーサー)
「組織の境界を越えるキャリア」とは
1990年代まで、キャリアは「1つの会社で長く勤める」という前提で語られていました。マイケル・アーサーはこれを批判し、「組織の境界(バウンダリー)を越えて形成されるキャリア」を提唱しました。
現代では、1社に留まらず複数の組織・プロジェクト・役割を渡り歩くことで、独自のスキルセットを作る人が増えています。
実践への応用:転職回数が多いことや副業経験は、バウンダリーレス・キャリアの観点では「弱さ」ではなく「強み」になり得ます。各組織での経験をどう統合するかが問われます。
3つの理論を自分に当てはめる方法
これらの理論は「正解を教えてくれるもの」ではなく、「自分を理解するための地図」です。
- 今の仕事が合わない理由を知りたい → キャリアアンカーで「本当の価値観」を確認
- 転職のタイミングを迷っている → プランドハプンスタンスで「動くことの価値」を確認
- 転職回数が多くて不安 → バウンダリーレス・キャリアで「経験を統合する視点」を持つ
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